潜って気づいた深海物語の第13話。

「男子は負けても帰れるでしょうが
私が負けて帰ったらやっぱり
女子はダメだって言われるから
頑張らなきゃいけないんだ」

この前の大河ドラマ『いだてん』。
人見絹枝さんの台詞に
何度も何度も頷き
何枚も何枚もちり紙で
涙を拭いて観たのだ。

そりゃあそうだ。
日本人女子初のオリンピック出場に
プレッシャーがかからない訳がない。

やっぱり"〇〇初"の
〇〇に当てはまってしまうと
結果を残さなきゃ、って
余計な力が入ってしまうのだろう。


あたしもだよ。
産休取得間近で、割と腹も目立ってきた
そんな時。

某ホテルの展示替えをしてこい、と
言われた。

新商品サンプルを
ダンボール箱2、3個に
集約し、車を運転して出かけた。
1時間くらいかけて
現場に到着。
旧商品を片付けて
新商品を陳列する。

ただ並べる、では
つまらない。
色々な備品で目を引く展示に
してやるぞ、と気合いを入れて
取り組んだ。
臨月で。

先方からは何度も心配された。
僕が代わりにやるから
何でも言ってください、と
有り難い言葉をかけて頂いた。

が、大丈夫です、の一点張りで
やりきってしまった。
中途半端で終わるのが
嫌だったのだ。

その仕事を指示したチームの
深海オヤジ生物に対して
絶対に負けたくなかったのもある。
でもそれ以上に、
だから女は、
だから妊婦は、と
これ以上蔑まれたくなかったのだ。

ハンドルが腹につかえながら
運転して帰社。


ダンボールの積み下ろしやら
片付けをとことんした。
やりきったおかげで、
あたしの中で"覚悟"が出来たのだ。

自分の目標達成とか
自己実現の欲求を満たす為の
"仕事"ではなくなった。

酸素の無いボンベを背負わされて
貧乏くじを引く女子が
いなくなりますように。

これから続く女子の
色々と仕事が
気持ちよく両立出来ますように。

これから生まれてくる
子供に対して
"キミがいたから頑張れたんだよ"と。
"仕事をしながらもいい感じに
育てられたでしょ"と
自分なりの親ってものに
なれますように。

覚悟が出来ると人って
怖いものが無くなるんだな。



うようよと深海生物達は、
あたしが自然に辞めるように
作戦を練っていたのだろう。
いろいろな嫌がらせをしたり
言ったりするのだが、
申し訳ないが
されればされるほど
言われれば言われるほど
くじけるどころか
どんどんガソリンになっていくのだ。
ハイオク。
ちょっといいヤツね。

だから、
酸素がほとんどない
ボンベを背負っていながら
猛烈に潜っていられたのは
このガソリンのおかげなのだ。

このハイオクが…

警察沙汰に…
なんてこった…