潜って気づいた深海物語の第20話は最終回の巻。

よっしゃっ。
やったぜっ。


含み笑いを噛み締めて
ガッツポーズが出るときって、
例えば…

今まで一度もA判定が出たことがない
第一志望に合格した時。

文無しになって、助手席にさす
相方すら居なくなってしまったのに
何故か億万長者で一位で人生ゲームに
上がった時。

9回2アウトで負けたと思ったのに
走者一掃のタイムリーで勝ち越した時。

あゝ終わりだ
と思っていたのに、そこから
立て続けにトライやゴールが決まって
逆転勝ちした時。

もう我慢の限界だよ
出ちゃうよマジで、と
腰をくねらせながら
トイレの列に並んでいたら
たまたま目の前の誰でもトイレから
人が出てきてくれた時。


そうなのだ。
ガッツポーズで小躍りしたくなる時って
非常に辛い難局を辛々乗り越えた
振り幅が大きい時なのだ。

って、ドン底にいる時には
そんなことを考える余裕などは
昔は無かったな。

なんであたしばっかり
こんな目にあってしまうのか、と
いつも隣の芝生を眺めては
悶々としていた。

人生落ち込みが激し過ぎて
これ以上自分を落ち込ませるのは
可哀想だからって
落ち込まないようにやたらと
その先を心配して
予防線をはったつもりが
逆効果になったりして。

まさに子育てがそれなのだ。
心配することが愛だと勘違いしたりして。
東奔西走して余裕が無かった。

あたしの背中の
酸素がほとんど無いガスボンベ。
たまたま遭遇する深海生物の
多様性を見つけては
面白がっているだけで
四半世紀も潜っていられるのだ。
騙し騙しアップアップしながらだけど。

そして、案の定
まさにまだ相変わらず
深海にいるのよ、あたし。
だけどさ、振り幅が大きい時は
最後にいいガッツポーズが
出せるって、経験値で知ってるからさ
辛くないんだな。


逆に、

(こんな経験させるとは、最後に
どんなどんでん返しがくるのかな?)


ってワクワクしたりする。
Mか、あたしは。


良いも悪いもない。
ただ通っているんだよ、その道をさ。
自分が決めた道だもん、
どうせなら、深海生物を
見つけて面白がるって、どうかな。