潜って気づいた深海物語の第8話。

深海。
いや、そこまでじゃないけどね。


あたしには、この"会社"ってもんが
海の中に見えて見えて。

潜れば潜るで、体力的に
キツかったりはする。
が、見たこともないような
生物に出会えて
愉快なこと、この上ない。

ええっ?!
そんなこと言っちゃうんだ、が
日々ある。
何それ!おかしくない!?、が
毎日ある。
だからね、都度それを怒っていたら
頭の血管が切れまくる。
体調に良くない。
面白がればいい。

深海生物は計り知れないのだ。
何をするか、わからない。


さて、入社して1年。
仕事にも慣れ
取引先とも
友達がいっぱい出来て
1人部署を謳歌していたら
突然部長から呼び出しがかかった。

異動だった。

やはり新人1人の野放し放題は
問題視されたらしく
都内を担当する部署に
まんまと吸収されたのだ。

今までの新規開拓は何だったのか。
飲み会にも参加せず
黙々と車を飛ばして頑張ったのは
広域関東圏として
1部署を確立し、次に繋げる
淡い希望があればこそ、だ。
なりふり構わず、
安全にスピーディーに仕事をこなす
流れがやっと自分に出来たのに。
これからなのに。

都内某所管轄は
営業でも、花形のチームだ。
異動を言い渡されて
皆に「おめでとう」を言われた。

何言ってんだ。
ちっともめでたくなんかない。
あの高崎のおばちゃんに
何の恩返しも出来てない。
セールをさせてもらったお店に
何の御礼もしていない。

これから仕事で返したかったのに
"不条理"っていう言葉の意味を
体感できたよ。


キラキラした海?
嘘だ。
ワクワクする?
ドキドキする?

いや、辟易するだ。

部長様の頭の中を
こじ開けて
一体何を考えいるのか
見てみたかった。


だが、怖いもの見たさが
好きで好きで…

あたしはまだ
海から上がろうとは
しなかったんだ。
さぁて、次にあたしがしたのは…