散髪放浪予定記。

 

美容院なるものに行くようになったのは

色気づいてきた中2くらいから。

 

それまではずっと

親父と一緒に

"床屋"で散髪をしていた。

 

サラリーマンの親父だったから

散髪は大概、日曜日の昼下りの行事。

車の運転もやりたかったのだろう

15〜20分くらいかけて

ちょっと先の床屋が行きつけだったのだ。

 

戸口には、赤と青のクルクルが。

シャンプーボトルは

緑色のサボテンのようなストライプの

シマシマレリーフがついた

プラスチックっぽい容器が置いてあった。

明るい蛍光灯の下で

おじさんは白衣を着て

ハサミやナイフがいつも平行に並んだ

ツーンとポマードの匂いが漂う、

そんな感じの床屋だった。

 

行くとあたしは

大人椅子にチャイルドシートもどきの、

まな板にビニールが張ったようなものに

座らせられて

相変わらずな"ちびまる子ちゃん"カットが

あっという間に完成するのだった。

 

あたしが何よりも好きだったのは

あったかいモコモコの泡を顔にのせ

キリッと眉を整えたり、

顔から首からのシェービングである。

いつも気持ちよく

顔の泡をナイフでシゴくように取っていき、

熱めの蒸しタオルで最後に顔を拭いて貰うと

むき卵のようにツルツルになれた。

爽快って言葉はまだその頃

知らなかっただろうが

いつも鏡の中のあたしは

いい顔していたのを覚えているのだ。

 

 

どんなに髪型に納得がいかずとも、

眉が出過ぎて残念な仕上がりになろうとも、

キリッとその眉の形が整い

ツルツルお肌がほんのりピンクになり、

ミルキーの小箱を握らせて貰えたらもう

あたしは幸せだった。

 

そう言えば

散髪好きはあのおじさんのおかげだな。

 

ってことで最近

やたらと床屋に行きたい。

 

どんなオシャレな美容院より

何故か床屋。

絶対顔剃り付きでね。

 

で、最近一軒、

どうしても惹かれるお店があるので

是非是非トライして満喫気分を

書いてみようと思うのだ。

 

散髪中は、雑誌などには目もくれず

絶対おじさんと喋る。

 

いろんな意味で

整いたくて整いたくて…。

 

手っ取り早い取り戻し方だ。