松之丞講談のはねた夜。

国立劇場の扉を出ると
季節が変わっていたのだ。

夜の永田町が
まるでバンコクのように
ムワッとしていた。
さっきまで怪談話を聞いて
ゾクゾクしていたのだから
余計に蒸し暑い。
開演前と全然違う。
そう感じた。

やっと季節が講談に
追いついてきたのか。
今日で梅雨明けかな。
だとしたら、神田松之丞って人は
もっている人過ぎて恐ろしいわ、
なんて事を考えながらの帰途。

"冬は義士 夏はお化けで飯を食い"

と、講談師の事を読んだ川柳がありまして
なんて、この度人間国宝になられた
神田松鯉先生はマクラでよく
話されていた事を思い出していた。

そんな講談師を盛り上げて
恐さとのギャップを感じさせるのも
やっぱりこういう
ベターっと蒸し暑い夏なのだ。
ジトジト雨の薄ら寒い夏なんて
怪談話がピリッとしないんだよ。


伝統芸能にも"天の気"が
大きく関わっていることを
今宵実感したんだ。

松之丞三席目の村井長庵の
『雨夜の裏田圃』。
これも天の気が話をうまく
進めてくれていて。

盲目女のおとせが殺されるのも
雨の夜。
殺した当人、三次が
おとせの亡霊につきまとわれて
発狂するのも
土砂降りの雨。


刮目せよ!
"天の気"の奥深さに、って
そう聞こえたんだ。

あの映画と
今日の講談と。

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こんな方向からも
楽しめるとは…
なんか楽しい。
生きているって。