悪い癖。

 

まさかまさかの『淀五郎』で大団円。

 

今日は神田松之丞独演会。

6回目の「二ツ目時代」は雨降りのなか

国立演芸場に飛び込んだ。

 

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会社でのことを忘れさせてくれよな、

って

嫌な気分を引きずりながら席に着く。

 

 

淀五郎。

役者のしたっぱ。

そんな彼が突然大抜擢されて

仮名手本忠臣蔵の塩冶判官役(浅野内匠頭)

をやるって時には誰だって調子こいて

勘違いするよなぁ…

やっと自分の時代がきた、くらいにね。

 

だから、判官切腹を演じたって

判官には見えない。

意気がる淀五郎にしかみえないから

相方に芝居をして貰えない訳か。

 

大事な場面を台無しにした、と先輩に

責められた淀五郎。

 

ダメだ自分は…。

 

死ぬ前にあの中村仲蔵

挨拶に行くのだ。

 

松之丞の仲蔵は

とっても優しいおじいちゃんだった。

丁寧に丁寧に、なにがダメかを

教えてくれる。

 

あたしは気づくと

仲蔵に諭される淀五郎をみているはずが、

知らないうちに

仲蔵に諭されているのは

あたしになっていて。

我ながら狂った想像力。

 

恥をかいて、恥をかいて、

今日がダメなら明日頑張れ。

明日がダメなら明後日頑張れ。

 

仲蔵は、そう教えてくれた。

 

 

したっぱからのし上がったといえば

中村仲蔵をおいて他にはいない。

だからこその含蓄ある言葉は

沁みる。

 

「見て見て〜今からオレ淀五郎が

切腹の場面をやりまーす!」

 

って演ってた淀五郎が

仲蔵のアドバイスで生まれ変わる。

判官(浅野内匠頭)に成り代わり

自分を捨てて演りきった。

 

"そういうことか。"

 

腑に落ちた。

 

オレがオレが。

何故周りはわからないんだ、って

上から目線の毎日じゃないか、

いつもあたしは。

 

仕事のストレスが何故起きるか、は

今日の『淀五郎』に教わった。

 

誰と競争することもない。

自分を掘り下げればいい。

 

今日失敗したなら

明日は気を引き締めたらいい。

明日しくじったら

明後日頑張ればいいんだ。

 

なんて頭を冷やせたのは

独演会終わりが

雨上がりの

だいぶ涼しくなった夜だったからかも

しれないな。

 

だけどなぁ。

なんでかなぁ。

松之丞迫真過ぎて凄すぎる、

カッコいい!で

何故終われないのだ、あたしは。

 

いつもそうだ。

この講談最高!

この演目感動するな、で

終われれば楽なのに。

 

今これを聞いた意味は、

松之丞さんが今日これを

かけた理由はなんだろう、なんて

考えなければ楽なのに。

 

悶々としていたら、また思考回路が

おかしな方向に。

 

芸能が消えてなくならない意味って

こういう馬鹿がいるからかもしれない

って思ったんだ。

 

芸って過去のものじゃないのかも。

今に繋がる、今のものだ、

とね。