トイメンの新入社員の話。

 

今朝、血相変えて出勤してきた

ヤツがいた。

 

そう、彼はあたしのトイメンに座す

新入社員くんだ。59才だけど。

あ、この前誕生日だったから

赤いちゃんちゃんこだな、もう。

 

「おはよう」もそこそこに

「ケータイ無くしちゃって。どうしよう。

ねぇ、どうしたらいいかな、タマサプリ 」

とワナワナしていた。

 

「会社の?個人の?」

「個人ケータイです」

「じゃ、仕方ないねぇ」

 

なんてイジワルを言いつつも

ものが無くなると集中できなくなるのは

知っている。

経験あるからね。

仕事に支障をきたすのは間違いない。

だからチームのみんなも

寄ってたかっていろいろなアドバイス

する。

 

まずは

無くした可能性のある場所に電話をかけて

聞いてみろ、を試す60才の

赤いちゃんちゃんこ

 

何軒か電話が繋がるも

それらしきヤツは無いし

届けられてもいない、と肩を落とす

赤いちゃんちゃんこ

 

自宅のある駅、会社のある駅などに

いろいろ電話をしまくるも

朝の忙しいラッシュ時の駅員さんに

余裕があるはずがない。

冷たい対応、

仕方ないのだ。

うつむきが深くなる

赤いちゃんちゃんこ

 

だけど、不思議と

ケータイはあるし、

なんか戻ってくる気がして

あたしはおっさんを励まし続けた。

 

「大丈夫じゃね?何か、有るような

気がして仕方ないんだよ。

だからさ、諦めんな!頑張れ」

赤いちゃんちゃんこの薄いツムジに

そう伝える。

で、ケータイ会社に電話してみろ、と

アドバイスする。

進んだ世の中だ、何かしらアドバイス

くれるだろう、と。

 

流石はケータイ屋さん。

ヤツのケータイは、時間切れの

ウルトラマンの赤ランプよろしく

ピコーンピコーンの発信をして、

某駅にあるらしい、と朗報その1を

得ることが出来た。

 

速攻でその駅に電話をかけて確認する。

 

調べるからと、電話を切られ

また肩を落とすトイメン。

 

程なくして、

「らしきものがある」の朗報

その2が。

 

赤いちゃんちゃんこ

すぐにその駅へと向かった。

 

果たして、

今朝出勤してきた時とは

まるで別人の

嬉しそうに顔を上気させた

おっさんになって戻ってきた。

 

「タマサプリさん、有りました!

良かったです。本当に安心した。

だけどあの時、なんで僕に

有るから大丈夫だと言ってくれたの?

見えたとか?違うか。でもね、

そう言って励ましてくれたから

諦めないで探して、見つかったんだ。

ありがとうございます」

 

 

どうでもいい今朝の出来事である。

あたしの予感、凄いでしょ、の

自慢の意味でこれを書いたのではない。

 

ただ、何かわからないし

理由も言えないが

有る気がする、ってことは

誰にでもあることだと思う。

 

だけど、トイメンは

こう言って褒めてくれた。

 

"僕をガッカリさせないで、

背中を押してくれる言葉がやる気を

出させてくれたんだ。ありがとう"

 

言葉は言霊。

力が宿る。

 

プラスのエネルギーを貰いたいなら

そういう言葉を吐かなくちゃ

いけなかったのだ。

 

愚痴っている場合じゃないと

赤いちゃんちゃんこに教わった。

ありがとうは、あたしの方だよ。

赤いちゃんちゃんこ