手の鳴る方へ…

目隠しをした鬼役ひとり。
周りでは

"鬼さんこちら 手の鳴る方へ"

と囃し立てる遊びが昔、あったな。


あれって確か鬼が
周りの子の誰かを捕まえられたら
鬼役はチェンジだったっけ?
その先が思い出せない。


あたしが今、真ん中で
鬼役。

周りではいろんな子が
"鬼さんこちら"と手拍子をして
あたしを呼んでくれていて。

とりわけ大きな手拍子が
神田松之丞さんの
講談だった訳。

その時は
目隠ししているから
何がなんだか
わからなかった。

わからないから
素手で触って
誰だか、当てる。
それがなんだか
自ら、探る。

そんな風な
遊びをしている感じだった。

講談という
新境地に足を踏み入れた時は。


好きを突き詰めよ、
好きなものを探しに行け…みたいな
アドバイスや言葉は少しだけ
プレッシャーだったけど
手の鳴る方を向いてみるだけなら
簡単だ。

そして
こうなった。

今、周りでは
いろんな手拍子が聴こえて
くるんだ。

邪念を無くして
耳をそばだててみたらね。


何も考えず、耳をすます。
手拍子が聴こえてきたら
そっちの方に向かって
進んでみる。

何かにぶつかったら
それを
触ってみる。
素手で、だ。

ちょっずつ
わかってくる。

そうなったら
しめたものだ。

あ、そうか。

"鬼さんこちら"の遊びは
鬼が捕まえた子が誰だか
当てるんだっけ。