あり得ないが、あったんだ。

 

 

お気に入りのコートを

さっきのコーヒー屋さんに

忘れてきたのに気づいたのは

車を走らせてからだいぶたった時だった。

 

まあ仕方ない。

着払いで送ってくださいと頼もう…。

 

心配しながら運転してくれる友が

お店の名前をスマホに連呼してくれる。

助手席から電話番号を押すとすぐに

あの店主の明るい声が聞こえてきた。

 

「お帰りの際に気づいてあげられなくて

ごめんなさいね。嫌じゃなければ

住所を教えて頂けますか?」

 

「ご面倒をおかけします」と住所を伝えて

電話をきった。

それが土曜日の夕方のこと。

 

2日後の月曜日の午前10時頃に

ゆうパックが届いた。

 

送り主はあのコーヒー屋さんだった。

着払いで、とお願いしたのに

荷物は元払いになっていて、

コートは買ったばかりの様に綺麗に畳まれて

二重のビニール袋に入っていて、

きっちり梱包されていた。

 

そしてお手紙が添えられて…

 

"ご縁を頂きましたことが嬉しいので

着払いとのリクエストでしたが、又のご来店の時

私の自慢のコーヒーを飲んで欲しいため、

この様な対応とさせて頂きました。……

またお会いできる日を楽しみにしております。"

 

店主さんの人柄を表したような

虹色のシャボン玉の便箋で2枚。

 

呆然とした。

あり得ない、と思った。

忘れたのは自分がボケていたせいなのに。

 

あの時まだお店には他にもお客様がいて

接客されていた店主さん。

しかも土曜日の夕方だから、郵便局は

とっくに閉まっていたはずで。

 

なのに月曜日にはもう我が家に

元払いで届いているって…どういう事だ。

 

心温まるとか

愛が溢れるとか、

結論を言えばそこに行き着く。

だけど、ふと思ったことは

あたしはこういう人と一緒に仕事ができたら

どんなに幸せだろうな…って。

 

美味しいお店、素敵なお店…と

店選びの基準は人それぞれ違うけど

あたしは"人"だ。人に惹かれる。

 

 

あの人に、

笑顔の可愛い紗世さんに、

また会いに行きたいと心から思った。

 

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田んぼに映る青空を見ながら

ベンチでコーヒー、飲みたいなぁ。

 

 

 

 

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