最初で最後。

 

「学校行事を春からことごとく

やってあげられなかったことを

申し訳ないと思っていました。

ですが、

そんな考えはおこがましいことだと

わかりました」

 

高校3年の保護者会だった。

コロナ禍で

最初で最後の会に

学校長がそう仰った。

 

なんで「おこがましい」のだろうか。

その先の言葉を期待すると、

学校長は

あるひとりの日誌を読み始めた。

 

そこには、

登校停止期間がいつ迄か。

授業が最後まで終わるのか。

今後、受験を含めてどうなるのかといった

高校3年の男子の不安が

書かれてあった。

が、驚いたのはその先の彼のまとめ方だった。

 

「どうなるかわからないからこそ、

今、目の前のことを全力でやるしかない。

もしかしたらこれが最後かもしれないと

後悔しないように、やりきることにした。

後輩が企画してくれた球技大会も

最後の学校行事になるかもしれない。

友達と弁当を食べて笑って話をするのも

もしかしたらこれが最後かもしれない。

そう思って、日々全力で楽しんだら、

いろんな思いがわいてきた。

先生や後輩、友人には感謝しかない」

 

読みながら、校長の声が震えていた。

 

「生徒一人ひとりが、いろいろな思いで

乗り越えていくことを自らやれている。

もう彼らは既に"切り替えて"

自分で前に進んでいるんだな、と

感動しました。高3でこう切り替えられる

なんて大したもんです。大人だってなかなか

難しいですから。

学校生活の思い出を残してあげられなかった、

これをやってあげられなかったと

申し訳ない気持ちでいるのはやめにしました。

もう彼らは既に自分自身で思い出をそれぞれ

作っていたのです。」

 

この講話を聞いていて

良き友、良き師に恵まれた息子を

少し羨ましく思った。

 

そう言えば妙に淡々としている。

今を楽しみ、

自分で考え

乗り越える。

ポジティブモードの

友人や学校の雰囲気から

きっと良き影響を受けているのかも

しれないな。

 

とは言え最早、

受験モードの保護者会。

ピリピリした内容だったのに、

なんとも言えない清々しい気持ちに

させてもらえた。

 

自分で気づいて

都度切り替えて。

 

過去や社会に文句を言って

何かが変わる訳じゃなし。

自分を変えて

自分の歩幅で

進んで行こう。

 

子供の保護者会で

自分のフンドシを

締め直せるとは…

ありがたい。