潜って気づいた深海物語の第10話。

当時の自分に言ってやりたい。

感情は、出したら終わりだよ、って。


大坂なおみ選手。
コーチが変わり、今の状況に
首をひねっているのでは。
"怒りをやり過ごせ"で世界女王に
なったのに…
今は、"感情を出しまくれ"の方針が
あの結果だ。女王陥落じゃないか。
残念過ぎる。
でも側から見たら、身をもって
教えてくれてありがとうなのだ。

あー、だけど
あの時のあたしに
教えてやりたかった。


新部署に異動し、
既製品ではないものを
イデアを出しあい
練っていく仕事内容に
ワクワクしていた。
お客様からオーダーを頂く。
工場とセッション。
その結果を踏まえてお客様と
セッション。
完成して納品完了した時の
爽快感は、それこそ

「なんも言えねぇ!」。

改めて自分が生きてる気がした。

気持ち良すぎるから、
このまま独身を貫いて
仕事に邁進しても構わないな、って
そんなことまで考えていた。


だが、思った通りに人生って
いかないんだよね。
あたしは昔から。


たまたま仕事先で知り合った、
一番苦手なタイプだった人。

仕事を通じて不思議な縁を感じ
結婚したくなった。

で、とんとん拍子に話が進み
結婚式の招待状を上司に手渡し
した時だった。

「会社、いつまでいるの?」



確かに法人部に異動して以来
取引先や会社、工場の人と
喧嘩が無かった訳じゃない。
言った言わない、のくだらない
やり取りやら
とにかく感情を露わにして
怒りまくったことは多数。

だが、この上司との
結婚云々のコミュニケーションで、
思いっきりタガが外れた。


寿退職するとは思わなかった、だの
夢中で仕事をしているのかと
思っていたら、なんだイチャイチャ
してたのか、とかね。

仕事の成果を見て言ってくれ、だよ。
退職しないと何度も伝えているのに
このザマだ。

両立は無理だの、
家庭を持ったら家事をするのが
女の生き方、だのと
頼んでいないことを教えてくださる。

仕方ないか。
なんせ弊社、仕事をしている
ミセスが一人もいなかったのだから。

結婚が決まって
花束をもらって
拍手をされて
幸せそうに退職する女ばかりを
見てきた。
見せられてきた。

だからかもしれない。
オヤジらがそう言うのも
無理はない。

「あたしの人生、勝手にきめるな」

と怒鳴ったら
「相手の稼ぎ、イマイチなの?」

ときたもんだ。

(お願いだから仕事を見てよ、
結果出してるじゃん。)

今迄の頑張りが、この結婚で
チャラにされた気がして
情けなくなった。

"なんで男に生まれなかったんだろ。"

社会人になって常に思っていた事だ。

男が所帯を持つ、って言ったなら
しっかりしてくる、責任感がでる、
良かった良かったって
拍手喝さい応援されるのに、
女がそうなると、まるで逆。
仕事に集中しなくて困る、と。
結婚すると言った瞬間
今までのキャリアはリセットだ、
くらいに思っているヤツが
会社にはウヨウヨいた。
オヤジばかりじゃない。
お姉様方までも。

が、そんなことは序の口な、
稀有な深海生物に出くわす事になる。
そう、いい感じな事件が起こるのは
もう間もなくなのだよ。