後でわかる、ってこれか。

一番太鼓が鳴る。

慶安太平記が今日ではねる。

やっと終わった、
全て通いとおせた満足感と
あ~終わってしまうという寂しさ。

複雑な気持ちで席に着き
太鼓の音に酔いしれる。


思えば最初は躊躇した慶安太平記だ。

新年一発目に、由井正雪か、と。
心願成就せず、道半ばで終わった人
一生を5日連続で聞かなくても…。

だけど、何故か心がざわつく。

って事は、聞かなくてはいけない
演目なのだな、と覚悟した途端
不思議なことに
縁あって席も確保できた。


神田松之丞って人を好きになって
本当に良かったと、通しで聞き終えて
心からそう思った。

由井正雪の野望は破綻して
幕府転覆は叶わなかったが
単なる悪魔計画って訳じゃ
なかったのかもな、と。

お家取り潰し流行りの当時だ。
再興を願う浪人を
正雪は利用したかもしれないが
本来なら大名になれたはずの
浪人からしたら
自分という存在を認めてくれたと
どんなにか嬉しかっただろうか。


正雪側からみたら、
ご本人が願った結果
ではなかった。
心願は成就せずに死ぬしかなかった、と
今も草葉の陰で思っているかも
しれない。

だが。

慶安の変は、武断政治から
文治政治へのきっかけになっている。

長い目でみたら、ちゃんと結果は
出ているのだ。

全19話まで聞いて、腑に落ちた。

そうなのだ。

史実に忠実かは問題ではない。
いろんな見方があるんだよ、って。
自分なりの目を持ちなよ、って
言われた気がした。

由井正雪を単なる
悪人で終わらせていない
松之丞慶安太平記の始末の美しさ。
自分のこれからを
始末を美しく終えられたら
幸せだと思った。

大願成就には至らなかったけれど
一石を投じる由井正雪的生き方。
かっこいいな、と。

いろいろがあたしの心にのしかかり
非常に大事な5日間だったと
終わって、わかったことである。


そして、この物語を
19話にまで仕立てて完結させた
神田松鯉師匠の巧みさに
感服するばかりだ。

全19話。
1と9か。
ちゃんと天地交流している。

大団円なの、当たり前だな。

後でわかる、って
こういうことだ。

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#慶安太平記
#神田松鯉
#大団円