手術開始。

 

 

*先端恐怖症ですか?

*閉所恐怖症ですか?

 

…などと書いてある同意書をしっかり読んで

手術に先立ちサインしないといけないのだが

誰だって先端を突きつけられたり、

刃を向けられたら怖いんじゃないのか?

恐怖症じゃない人なんているのだろうか。

でも、チェックをしたら

手術してもらえないのかな…

と、いろいろ思いながらあたしは

その欄にチェックを入れずに

同意書にサインをした。

網膜剥離と言われてからとんとん拍子で進む

右視野の狭まりに反比例して訪れるいろんな

ラッキーなタイミングを

取り逃がしたくなかったからだ。

サインの数分後には待ってましたの手術椅子。

 

人生初の手術スタート。

椅子の席がビジネスクラスシート並みに倒され

顔面に布袋らしきものがかけられる感じ。

手術する右目は空いている布袋だが、

頭部全部を覆われて

ガムテープ風な匂いのもので

顔面にしっかり固定されたようだ。

どんなビジュアルになっているのか、写真を

撮ってもらいたかったと今になって後悔。

 

顔面準備が完了すると

目にはホースのようなもので

ジョロジョロと液体シャワーが延々。

麻酔薬だろうなと思ったのは

だんだんと触られる感覚が消えたからだ。

 

右目は開いているのか

閉じているのかもわからない不思議な感じ。

瞬き多めの自分だから、手術の妨げになったら

悪いなぁ…と思ったのも束の間、瞼らへんを

クリップ的なもので摘まれてぐいぐいと

引っ張られた気がした。

芸人さんの洗濯バサミ芸みたいだなと

白い顔袋の中でひとりニヤニヤ。

 

手術室にはディズニーの「アンダー・ザ・シー」

が陽気に流れている。

顔袋の下から見える左目で

真上を見上げると

チンアナゴみたいにニョロニョロした

細い管の影や人の気配が見える。

(まさに今アンダー・ザ・シー状態だな、自分)

電気がついたり消えたりして明るさが

コロコロと変化する海の中みたいだし、

シュウシュウと耳元でレーザーらしき

器具のようなものが奏でる音は

まるでダイビングのシュノーケル音。

 

何度も何度も機械から英語の自動音声が聞こえ、

先生はじめサポートの方もルー大柴さん以上の

英単語増し増し会話。何を話しているのか

もっと詳しく知りたいなぁと、

この時ほど自分の英語力を残念に思いながら…

気づいたらユーミンの「カリービアンナイト〜」

の歌に変わっていた。

 

あ!ユーミンだ。この曲名、何だっけ?

 

曲名が出てこない。

えーと、えーと…で悶々と

考えていたら「はいOK!」と先生の声。

術後気になってスマホで調べてみると

真夏の夜の夢』。

そうだよそれだ!

 

2月如月春爛漫。

白昼夢のような1時間半。

外でタクシーを待ちながら

あまりの暑さにスマホを見ると

17度?!

夢から覚めてないのかな、あたし。

 

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痛さ皆無の日帰り手術が無事終了した。

だけどもこんな夜が待っていようとは…。

 

 

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