砂澤ビッキ。

 

北海道はアイヌの血を受け継ぎ、

木の経年劣化を楽しむ作品を発表し続け、

1989年に58歳で亡くなっている

彫刻家である。

 

札幌の芸術の森野外美術館に作品が有るのだが、

5mほどの4本の赤エゾマツの生木を

地面からニョキニョキたたせ、

倒れてもそのまんまにしてくれ、と。

 

"家に帰るまでが遠足"って昔よく言われたが、

朽ちて土に還るまでを作品とは…。

そんな芸術家だ。

 

まずはそのコンセプトに衝撃を覚えた。

とことん自我を対象に入魂して

作品に仕上げるのではなく、

木の"気"を魅せる。

なすがまま、ありのまま。

 

図録のビッキの言葉がまたいいのだ。

 

「私はよく自然の中を彷徨するけれども

自然を探究したり、理解しようとは

あまりしていない。

自然と交感し、思索する。

そこにあからさまな自己が見えてくる。」

 

ビッキを知り、

その人柄や作品と対峙して

自分の今までの承認欲求を

とことん恥じた。

 

自分をより大きく見せようと

カッコつけることばかり。

周りからの目を気にして

見るべき的を外して、でも

わかった振りをして、

ずっと生き延びてきた自分。

だから、自分がわからない。

 

ありのままの自分を

まずは見る、なのだ。

 

 

ビッキからも、それから

北海道の自然からも

そう教えて貰った。

 

ビッキとはアイヌ語でカエルだって。

揺れる柳を獲物と間違えて

何度も何度もジャンプするカエル。

何回も何回も同じ間違いをする息子を

親はビッキとあだ名にしたと。

それがそのままアーティスト名に。

 

全てにおいて

"ありのまま、なすがまま"。

 

理解しようとか

自分流に加工するとか

カッコつけたり

わかったふりして

ストレスなんか溜めなくていいんだ。

自分は所詮

間違いだらけの人間で、

しかもいつかは朽ちて土に還る。

 

力を抜いて

ありのまま。

そして自分は何を感じる?

 

 

生きることって案外楽しい。

ビッキに会えて良かったよ。

 

 

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