まくる。

スカートじゃないよ。
まくるったって。
おじさんが
女装家だった訳でもないし。
あたしもおじさんも
パンツ派だからさ。
あ、そっちは"めくる"だ。

"まくる。"

何をまくるか。



ナビなんかついてない
営業車。

目的地に向け
安全で
とにかく早く到着すること。
それしか考えていなかった。


地図を広げて
大体の方向を把握して
現場に向かう。

(確か、最初の角を左に真っ直ぐ、
だったな)

目星をつけて
まくり?ながら進むと、
なんか自然に着けるのだ。

いつも俯瞰視点で
見る癖。
知らない場所でも
(なんとなく)で到着出来るから
不思議だ。

しかも
俯瞰で見る、が
あらゆるものに役だった。

仕事の進行具合、
弊社だけではなく
他社の状況や比較。


不甲斐ない上司だな、とか
早々に事細かな営業を理解して
マウント取ってくる同期とか
自分は運転手する為に
大学を出たのか、とか
考えても仕方ない事は
なるべく考えないようにした。

だって一人で運転なんかしていると
自然に涙が出てきたりするから。

前が見えなくなって
危ないし。
悩んだって
始まらない。

だから、そんな情け無い状況すら
なるべくまくることにした。

スピーディに
でも粛々と。
目の前にあるものを
淡々と処理する。


取引先には
新入社員ではない顔をして
自分の時間をまくった態度をとって
ナメられないように要領良く
立ち居振る舞う。

おじさんとも
なんとか仲良くなって
彼の得意な事務処理をしてもらい
自分には出来ない部分を
フォローしてもらう。


取引先の担当者さんだって
まくりたいだろう、って考える。
すると、あるアイデア
浮かんできたのだ。

商品画像付きの
発注書を作る、だ。
これは、客先での売り場担当の
おばちゃんとの
会話がヒント。

商品無いなら
わかりやすい写真掲載のチラシとか
もってきなさい、って。

で、おじさんも相談に乗ってくれて
画像付き発注書を作ることした。
欲しい画像の下に希望数を書き、
送り先欄を記入して
それをそのまま発注書として
弊社宛にFaxできるようにする。


面倒くさいおばちゃんは
それをお客様に記入してもらうだろうし
会社宛に返信してもらうから
出荷担当者が
そのまま手配できる。

我々の社内滞留時間も
まくれた訳だ。

ぼちぼち数字とやらが
動き出した。


嘆いていても
始まらない。
そのままじゃ嫌なら
何か行動するしかない。


その時は、まくることばかり
考えていたんだ。