やっちゃうよな。

昼メシくらい、ひとりになりたい。


は、いつからかなぁ。

ここのところ
家でも、会社でも
なんか辟易することばかり。


喋りたくない。
けれど、心は満たされたい。
だいぶ病んでるんだと思う。

金で解決、するしかない。
で、美味いものを食べに
会社を抜け出す。


今日も、ランチタイムの
ピークを過ぎた頃
やっと仕事から解放され、
最近唯一の楽しみの
新規開拓
美味いもの探しに向かった。


目指すは、いつも並んでいる
あのラーメン屋だ。

こんな時間だから
すんなり入れるだろう…

到着したら、店を出る人が。
だから、
ラッキーにも並ばずに入店。

店内は恐るべしの
ほぼ満席状態。

こんな中途半端な時間なのに。

その後も入れ替わり立ち代わり
お客様は絶えないのだ。



白木の、
ただただ美しく
丁寧なカウンターの真ん中に
陣取り、大将を見つめる。

塩、を頼む。

程なくして
「はい、お待たせしました。
上から失礼させて頂きます」
大将の丁寧な言葉と共に置かれたのは
黄金色なゆで卵。
絹糸のような真っ白な白髪ねぎ。
カシミヤのようななめらかな
チャーシュー。
透き通るスープ…で
なんとも美しく優しい、
宗教画のような色あいの
光り輝くラーメン。

神の降臨かと思った。


利尻昆布だしが効いた、
さらっとしているのに
存在感のあるスープ。
透明な金色のそれは
ひとすすりで虜に。

気づいたらスープばかり飲んで、
麺にも
他の具材にも
手をつけてないことに気づく。

おっ、と。

スープの次に
絶対手作りな気がする、
シャキシャキメンマにも
遭遇してしまった。
(このメンマで白飯が
どんぶり一杯はイケるな)くらいの
おかずになるヤツだ。

そして、
太さも硬さも絶妙な麺。
全てを纏った安心感な味。

持っていると
なんかいい匂いがする割り箸に
ふと気づく。

丁寧な大将。


ぱっさぱさな病んだ心に
これ以上ないくらいな
潤いをくれたラーメンだった。

そう、ここは
言わずと知れた
"KUROOBI"。


気づいたらスープを飲み干して
食後のコーヒー、いや
水すら飲みたくなくなった。

替え玉じゃなく
替えスープしたくなる。


こんなに丁寧なラーメンに
あたし史上出会ったことが
ない。

人間ドックの前に
スープを飲み干してる場合じゃ…

でも、これなら
やっちゃうよなぁ。


大将がラーメンを出す手。
何故か来迎印に見えたんだ。