潜って気づいた深海物語の第6話。

そりゃあさ、イヌやサル、キジが
いてくれたら、鬼退治は大成功
でしょうよ。


こちとら一匹。
右も左もわからない
大海におっぽり出された
グズでノロマな亀に悪いくらいな
生き物だ。

鬼退治する、と気合いを入れたは
いいが…どうするだ?だった。
一発逆転ホームランを打つには
来た球を打つって教わった気がするが
球はどっからも来ない訳。

仕方なく…な素人考えでやったのは
まあまあな近郊の店舗での
"セール"なのだ。
安直だね。

それも、入社3年目だと偽った
新人が、だ。
馬鹿だよね。
無鉄砲って言うんだな、世間じゃ。
クライアントさんに失礼極まりないが
そうするしかなかったんだ。

何がなんでも月300万を超えたい、
ってただそれだけだった。
あたしのガソリンは。

大体のセールの流れは
元の上司から学ぶ。

まぁなんとかなるだろう、って
高を括っての当日だ。

だいぶ早く到着して
陳列して
スタンバる。
内心ビクビクだが
セール好きなので、と
嘘を言った手前
やるしかない。
と、腹を括った時だった。

全く違うチームの
すれ違った事があるかな、くらいな
上司が登場したから驚いた。


失敗するのを
見に来たんだよ、と
ニヤニヤしながらも
エプロンを着けて
一緒に立ってくれるじゃない。

1人慣れしているから
大丈夫ですから、と
言いながらも嬉しくて
トイレに駆け込み涙を拭いた。


マックス辛い時って
人がわかるね。
その人がどれだけ優しい人なのかって
野口さん、心底わかったよ。
今だにこんなに覚えているんだ。
あの時のことを。
あなたはさっさと天国に行っちゃって
忘れちゃったかもしれないけどさ。


社会人という
このキラキラした海の中は
いったいどんなに素敵な世界が
広がっているのだろう、と
思いきって飛び込んでみた。
そうしたら、
酸素が充填されてないボンベを
背負わされていたって
気づいたんだ。
慌てたね。
頭が真っ白になった時に、
居ないはずのバディが突然現れて
助けてくれたんだよ。

なんか、社会人になって
辛酸舐め尽した感ある
この半年だが、
野口さんのお陰で
少しだけ前向きになっていたのは
間違いない。


で、どうなったか。
セールは?
数字は?

今日はなんとなんと
お時間がいっぱいいっぱい、で。

この続きはまた明日に。