栄屋~日本一!!

神田松之丞さんが好きなのか、
"中村仲蔵"の話が好きなのか、
なんかもう
わからなくなってきた。

鶏が先か卵が先か、って誰が最初に
言ったか知らないけれど
上手いことを言うもんだね。
本当にそうなんだ。

まあ、どっちでもいいし
どっちも好きだし
大事なので。

しかもだ。
この話をまた、いいタイミングで
かけてくれるのだ
神田松之丞って人は。


あーあ、
ちっくしょう、
ダメだなぁ、
なんでかなぁ、
参ったなぁ、
どうせさぁ…
なんていうレベルの時に
大概出会える講談で。
聞いた後は
薬でもやったら
こうなれるかな、くらいまで
回復するやつ。

シャブ浜、ならぬ
"中村シャブ蔵"って惚れて
隠れ呼びしちゃうくらいに
愛している。
あくまでも個人的に
勝手にそう思っているだけだが。

それくらい好きな
"中村仲蔵"の話が今日
牛込箪笥町で轟いた。


今日の児玉先生の話では
本当の中村仲蔵
基礎が完璧に出来ていた、と。
ただ本筋の血じゃないだけ
だった、と。


歌舞伎の世界で
血がない、
本筋じゃないだけで
"努力なんてしたってダメじゃね"で
終わるんじゃないか。

最初からてっぺんなんて
夢のまた夢って諦めて
もはや、目指そうともしない。
それはあたしだよ。
スタートラインにすら
立たない気がする。


そんな世界で
なんとか、
もがいて悩んで苦しんで
てっぺんを目指す仲蔵に
何度も何度も震えてしまう。

弁当幕っていう
華のない場に
どうやってお客さんを
惹きつけるか。

シーンとする本番に
"蹴られた"
言わば無視された、と
肩を落とした仲蔵を
見れば見る程感情移入を
しちゃうのだ。

「栄屋~、日本一」

あのおじさんの声に
あたしは毎回嬉しいよ。
嬉しくて嬉しくて
鼻の奥が痛くてさ、
その痛みすら
松之丞さんの講談の邪魔に
なるんじゃないか、って
抑えるよ。
耐えるよ。

そして目を、耳をとことん
研ぎ澄ますんだ。
中村仲蔵が乗り移った
神田松之丞に。


生きているうちに
"中村仲蔵"に
出会えて良かった。
神田松之丞に
出会えて良かった。


これはもう
完璧なあたしの薬だ。
ダメじゃない、薬なんだよ。


観て!
轟きが絶対
ここにくるから。