神がかった主婦。

 

 

ウチの左斜め下の一軒家。

三階建の屋上には広い物干し場がある。

 

今日は、そこにお住まいの気になるお方、

あたしが勝手に「神主婦」と崇めている

彼女の話をしようと思う。

 

例えば今日みたいに、

気持ち良く晴れていい洗濯日和だなぁ…

さぁてそろそろ洗濯機をまわすかなぁ…

 

と、あたしはふと窓から外を見る。

既に彼女は洗濯を終えている。

とっくに、お姿は屋上にはない。

色を揃えた美しいグラデーションで

洗濯物は気持ち良さげにはためいている。

 

例えば、

雲行き怪しい微妙な空模様の時のこと。

雨雲レーダー的には「あと30分後に雨」。

この仕事を終えたら取り込むかな…と、

ふと窓から外を見る。

彼女は取り込み終えた様子だ。だが、あたし。

もうちょっと時間はあるんじゃないか?な矢先、

ベランダに、ポップな水玉模様が出来はじめ…

 

30分後じゃないじゃん。

 

あたふたと洗濯物を取り込みながら思うのだ。

(なんで彼女は、まもなく雨が降るって

わかったのだろうか。レーダー以上の

レーダーが内蔵されているのでは

なかろうか…)と。

だって、一度や二度じゃないから。

 

スマホの雨雲レーダーを

あてにするのはやめよう。

窓から外を見るのだ。

神主婦の指示を仰いだ方が正確だ。

 

スッキリ片付いた屋上。

美しい洗濯物の干し方。

 

それだけ見ていても

ウットリだ。

実力がわかる気がする。

 

神がかった主婦。

 

サラリーマン時代、恥ずかしながら

主婦なんて…と半ばバカにしていた。

今、心から反省している。心底だ。

反省どころか、尊敬だ。

洗濯ひとつとっても

マルチタスクの極み。

 

いかに手際良く

美しく

しかも楽しめるか。

 

神がかった主婦が

あたしを改心させてくれた。

奥深くて、面白い。

技と呼ぶにふさわしい。

恐るべしだ。