あの金木犀のせいだよ。

 

護岸工事で

川っぺりの金木犀がことごとく

切られてしまったのが数年前。

下町だからって

江戸風にしたかったのか…

薄っぺらい石積みの雰囲気が

未だに慣れない。

 

石積みの前は

金木犀の木が両サイドにびっしり並んでいた。

この時期には川から少し離れた

我が家まで

あのいい匂いがして

ここいら一帯がなんとも幸せな

秋の気配に包まれるのが好きだった。

 

懐かしいなぁ、あの頃。

あんまりにもいい匂いだったから

保育園帰りにウチの子供達、

あのオレンジ色のつぶつぶの花を拾ってきて

家にパラパラ撒いてくれたっけ。

掃除が大変だったけど…。

 

残念だなぁと

金木犀に思いを馳せながら

その界隈を歩いた時だ。

 

ふと微かにあの匂いがするじゃないか。

 

どこぞの家か

それとも

残り木か。

 

自然の匂い、

とりわけ金木犀の匂いって

何であんなに気持ちいいのだ。

あの調合って、なかなかだよね。